CASSOULET
フランスの郷土料理『カスレ』

カスレはオック地方料理の神である。それも三位一体の神である。父なる神はカステルノダリーのカスレ、子なる神はカルカッソンヌのカスレであり、聖霊はテゥールーズのカスレである。
このラングドッグ料理の起源は、美食の歴史の中でもかなり大昔にさかのぼる。しかし、料理史研究家の中には、インゲン豆がヨーロッパに持ち込まれたのは新世界の発見後であることから、カスレの起源は15世紀であると主張する者もいる。
歴史よりも伝説を重視する別の料理史家は、クリストフ・コロンブスによるアメリカ大陸発見よりもかなり前からフランスにはインゲン豆があり、特にこの国の南西部では非常に豊富であったと断言している。
いずれにせよ、カステルノダリーに伝わる民間伝承の伝説が、これらの歴史家の方が正しいことを証明しているように思える。

この伝説によれば、カスレの起源は1492年をだいぶ遡る百年戦争の時、すなわち1337年から1453年の間という。当時、カステルノダリーを包囲していたイギリス軍を前にして、インゲン豆入りの<エストファ(蒸し料理)>が初めて作られた。これに後に多少の変更を加えて、ラングドッグ料理の誇りである有名な<カスレ>となった。
この素晴らしい料理がいかにして作り出されたか、その経緯は同じくこの伝説によれば次のとおりである。
この町のブレヴォ(地方行政官)は包囲された兵士を勇気づけようと、住民が持ち寄れるあらゆる食糧で作った美味しい一皿料理の食事を食べさせてから、敵に猛威をかけさせたいと考えた。
包囲された町の倉庫には、大量のインゲン豆がのこっていた - これはアメリカ大陸発見以前であるのを忘れてはならない。守備隊の料理人は、これらインゲン豆を使って生や塩漬けの豚、羊、鷲鳥、ソーセージなど、さまざまな肉汁の栄養を加えた蒸し料理を大量に作ることが出来た。これは間違いなく美味であったろう。
